大学施設見学会参加報告

 

 森迫学長が学内の貴重な建造物をご案内する施設見学会が開催され、参加した同窓会員から感想をいただきました。

  日程:令和5年11月14日、16日、30日 13:30~15:00頃

  施設:松ヶ崎キャンパス内の建造物 3号館、自動車庫、KIT倶楽部(以上3件は登録有形文化財)、和楽庵(何有荘)

デジタル測量技術などの新たな復元技術で作成した外壁のナグリ板の実装例を説明される森迫学長

和楽庵(右)と

北側のセンターホール(左)

武田五一先生の胸像

(和楽庵の道路を挟んだ西側の植え込み)

 


和楽庵(左)と

3号館(右奥)

3号館の玄関

3号館

3号館会議室(記念室)

建築当時の内装が残る


ウィリアム・メレル・ヴォーリズ設計の建物「KIT倶楽部」を説明される森迫学長



■建築見学会に参加して

 工繊大の敷地内(工芸本館の敷地の東端)に1-2年前?から気になる洋風と和風を組み合わせたような2階建ての木造建築があります。この建物を現学長の森迫さんにガイドしてもらえると云う見学会に飛びついて、去る11月14日に大学へ行きました。当日は小春日和でゆっくりと建物を見ることが出来ました。なんでも、工繊大でも教鞭をとった「武田五一」の作品になる「和楽庵」で、もとあった東山山麓から大学へ移築したという。しかも工繊大の費用でと聞かされ「あっぱれ、工繊大」といい気分にさせてもらいました。(繊維化学科S45年卒 長澤次男)

 

 ■優れた建築物はその住人や利用者がより心地よく過ごせるよう細心の工夫がされているものです。佇まいにも家具什器の選択にもそれらに携わったであろう人々の喜びが見て取れて大変に興味深く心楽しくなります。遠い昔に学んだ工繊大の建物であれば尚一層のこと感慨深いものがありました。主催していただきました皆様に感謝申し上げます。(電子工学科S51年卒 肆矢健二)

 

■武田五一先生(京都高等工芸学校図案科教授)設計の洋館「和楽庵」について、森迫学長から外壁のナグリ板の復元技術の説明があり、その後、内部を見学しました。ステンドグラスは美しく、部屋に外光を取り入れる工夫が随所に見られました。2階には「伝統文化と科学技術が融合」した挑戦的プロジェクトを紹介したパネルがあり、洋館の文化的価値と新技術の融合に関する次のプロジェクトへの期待が大きくなりました。(電子工学科S51年卒 森本一成)

 

■施設見学会の一感想

初冬の頃、比較的暖かな午後、松ヶ崎キャンバスの本部学舎前で、森迫学長の、穏やかではあるが艶やかな声で丁寧な説明をいただいたバックの洋館は、本学創設120周年を記念して、京都東山山麓南禅寺界隈から移築した「和楽庵」だとお教えいただいた。もとは京都の実業家の別荘であったとか。

 

この洋館だが、館内に案内していただくと、竣工は大正期であったようだが、洋式の外観に和の精神や様式を取り入れた、建築家の思いがひしひしと伝わってきた。ついつい、立ち止まってしまった。

 

2階の大広間、その上部周囲には中国の唐・宋時代の詩仙36人の肖像画が飾られているではないか。聞くと、あの有名な京都左京区一条寺にある詩仙堂と同じらしい。詩仙堂は、江戸時代の文人石川丈山の別荘だったと言われているから、元別荘「和楽庵」の所有者の、思いと趣味のよさを強く感じた。

 

また、元々は1階の大広間にあったものを今回移築時に2階大広間に移したと聞く、ステンドグラスの模様が枝桜になっていて、さぞ華やいだ気分を味わった客人も多かったことだろうと想像した。

 

「和楽庵」のこれからの活用は、本学がますます「伝統」と「革新」を統合し、その新たな未来を切り開く場になっていってもらいたい、との学長の力強い想いを聞き、胸が膨らむ気がした。すでに、2階の36詩仙が見守る大広間には、将来への夢の実現に向けた論議の花を咲かせられように、大きなディスプレイが設置され、サイバーハウス化を進めようとしているのがよく分かった。

 

ただ、やや残念に感じたことは、この和楽庵の設計者であり、日本の古建築物修復等に多大な貢献をした本学教授であった武田五一氏の銅像が、その近くにありながら、植込みの茂みに埋没してしまっていたことである。「和楽庵」を訪れるたびに思いだしたい先人である。

 

もうひとつ、やはり「和楽庵」は、森深い南禅寺界隈にあってこそイキイキするのであって、周りが建物だらけの都会に引っ越ししては、居心地が悪いのではと懸念してしまったことである。

しかし、すでに建立後100年近くになり、2022年には国の文化財建造物に指定された本学3号館(講堂)の歴史を醸し出す、風格ある外観をバックにすれば、「和楽庵」の写真映えももっとよくなるかもしれないと連想した。

(繊維化学科S43年卒 中村成臣)